二十歳の誕生日に買ったショベルヘッド。
そして二十六歳と何日かで売り払ったそのショベルヘッド。
バイブスでデカイ広告を出していたアメリカンストリートというデカイ
ハーレー屋に行った。
話をたくさん聞いて、ショベルサウンドを聞いた19歳の心は躍った。
家に帰り、当時一緒に住んでいたバンドメンバーにそのドキドキを話したら
「買えばいいじゃん」の一言。
二十歳の誕生日に契約した。
総額160万円の買い物だった。
何日後かに納車され、家まで45分の道のりを3時間半かけて帰った。
走れば止まり、止まっては掛けて、キャブからガソリンが漏れて止まらない。
全然止まらなかった甲州街道。
バッテリーが上がり、ガソリンスタンドでジャンプしてもらい
何とか走り出すが、また止まる。
フロントタイヤを蹴る・・・がスネが痛いだけだった。
それでも何とか走りだし、家まで600メートルって所で
エンジンが片肺になる・・・・。
頭がおかしくなり、うめき声を発しながら家までなんとか辿りつき
へとへとでベットに横になる。
アメストの受付の人は言った
「ハーレーなんてそんなもんだよ」
「エンジン開けないと」
と。
3回。3回。3回もエンジンを開けては閉じた。
東京上石神井から中標津の間を何回も走った。
時間があれば都内を走り、長期で休みを取っては北海道を走り回った。
ウインカーが飛ぶ。
バッテリーのターミナルが折れる。
プラグがすすでプラグじゃなくなったりもした。
たくさんのトラブルを経験したが、家に辿りつけなかったことはない。
それがショベルヘッド。
素人の俺でもなんとかなる。
そう、なんとかしてきた。
意地で維持したのである。
22歳の誕生日に北海道に戻った。
仕事でショベルヘッドに乗る時間が少なくなる。
メンテナンスなんてしてあげる時間すらない。
「そうだ。時間が無いならカスタムだ。」
アレを外し、コレを外し。
フレームだけになり、自分の好きな形に仕上げた。
2年半はかかったんじゃないか・・・。
試走のためにエンジンを掛けようとするが、キックだけにしてしまい
掛かりにくい。単にキックが下手なだけであるが・・。
それでもエンジンを掛けた。
やはり素敵なサウンドだ。
そのサウンドから9ヶ月。
ショベルヘッドは俺の元を去った。
迷いは無い。
俺には未来があるから。
過去は俺を弱くする。素敵な思い出も。嫌な過去も。
明日は俺を強くする。何があるか分からない恐怖と、最高に楽しい明日を確信しているから。
最高に楽しい明日を探し続けよう。
今日も最高に楽しかった。
旅はまだまだ続く・・・